老人街道

日男がつぶやいた

　日男は呟いてしまった。中男がもし台子に暴力で復縁を迫ったらどうする？という岡男の執拗な質問に。日男は、岡男が自分のグループの一員ではあるが実は中男と裏でつながっていることを知っていたので普段は用心していたのだが、その日はうっかり八兵衛であった。もし暴力で中男が台子を自分のものにしようとしたら、それはえらいこっちゃ！トラ男が台子を守るとしたら、手助けはしたいと思う。ただ先頭に立って暴力は振るわない。だって過去に米男や中男達からチビのくせに怒らせるとろくなことをしない、なので暴力禁止と言われていたので。日男は律儀なところがあり、喧嘩はよくない、みんな仲良し、友達１００人つくれるかな？という小学１年生の心も持ち合わせていた。しかし熊が人里におりてきて、悪さをするようになったのがきっかけで、それではいけないと近頃強く思うようになった。トラ男が正義の鉄拳をくだすなら、一緒にお供します。鬼退治の桃太郎の猿の心境である。

しめしめ

　しめしめ、とうとう言わせてやった。岡男は小躍りした。すぐさま中男やその同志たちに伝書鳩をはなった。岡男はなぜここまで中男に忠誠を誓うのか。諸説あるが、どれもこれが本当の理由とは立件できない。しかし中男にとって岡男の誘導尋問はお手柄であった。日男が喧嘩を売ってくるなら台子を力ずくで復縁させ、ついでに普段から気に入らない日男も叩きのめせると。どうせトラ男なんか忙しい男だからその間隙をついて台子を復縁させるのはわけがない。そもそも台子とおいら中男は離婚なんかした覚えがない。ちょっとの心のもつれで別居しただけだ。また一緒に暮らすのはおいら中男の悲願だ。いや台子もそれを望んでいるんだ。なんで日男に二人の関係を邪魔されなくてはいけないのか。邪魔するのなら、琉子も俺のものにするぞ。まさに中男はストーカーそのものであり、今の中男を御するものは現存するのであろうか。中男の手下は14億ともいわれている。

台子と日男

　台子はとうに中男とは縁が切れたと思っている。そもそも日男と籍を入れていたが、米男などの仲裁で離婚が成立した後、誰とも籍を入れていない、まして日男と別れた後は誰とも交際すらしていない。過去に確かに中子と台子は同志であったが、もつれにもつれ今はなんの関係もない。そもそも中子が性転換し中男になった今は完全に異分子だ。中男は夜な夜な台子の家の周りを大型犬を連れてマーキングしながら徘徊している。その臭いに台子の仲間には中男との復縁もありではと弱音を吐くものもいる。しかし今のところ多くの仲間は台子の支持者である。現状を維持するためにはトラ男と日男の助けは必要不可欠だ。しかし台子は不安でもある。本当にトラ男が加勢してくれるであろうか？日男はともかくその仲間はかなり中男に傾倒している。台子の人生は波乱万丈である。台子の心は揺れ動く。台子だけに台風のように。

日男の想い

　日男は考える今の現状を、中男の台頭を。このままでは琉子すら俺の妻だと言いかねない。兎に角、琉子を仲間にとどめておくにはトラ男の力は必然だ。しかしトラ男にはかなり貢いでいるつもりだが、何を考えているかわかりかねるところのある人物だ。ただノーベル平和賞だけは欲しいようだから、そこらへんがトラ男をつなぎ留めておく、大きなカギになりそうだ。台子を助け、琉子を守ってくれたら、間違いなくノーベル平和賞は貴方のものだ。それと大事なことは日男の仲間約1億の何割かの親中男派の動きを監視すること。何故、親中男派になったかの原因の探求解明が急がれる。何らかのトラップがあったのか？所謂、中男はプーさんに激似ということで、プーさんと言えば蜂蜜が好物で蜂蜜を使ったハニートラップはお手の物のはず。いずれにしろ中男の台子復縁計画は着々と進行しているとの噂が日増しに強くなっている。中男の性格、人格、行いが正されたなら台子から中男に復縁を申し込む日が来るかもしれないと思う、日男であった。そもそも台子達、中男達が集まればそれはそれは騒々しく誰が台子チームか中男チームかは区別がつかないのだから。復縁もありかもしれない。だけど中男には中指を立てて言っておく、琉子には手を出させないぞ！